女性のための、とてもわかりやすいバー講座「カウンター学のススメ」

Series3 自分好みの味わいを探ってみよう

東京・渋谷 BAR Adonis篇
「ホットカクテルを味わう」
写真・川田雅宏

パフォーマンスに浸る

バーの楽しみのひとつは、やはりバーテンダーが生みだすカクテルを味わうことにあります。世界的に知られたスタンダードカクテル、フレッシュなフルーツを使ったカクテル、バーテンダーのオリジナルカクテルなどさまざまにあり、無限ともいえる多彩な色香、味わいを楽しめます。 そしてひと口にスタンダードカクテルといっても、それぞれのバーによって味わいは微妙に異なるのがカクテルの面白味です。まったく同じレシピであっても、バーテンダーのシェークやステアの仕方、また微妙な匙加減の違いで甘酸辛のバランスに差が生じるからです。いくつかのバーに出かけ、まったく同じカクテルを試してみるのもいいでしょう。 また一店のバーを贔屓にして、何度も出かけていろいろなカクテルをつくっていただき、その中から自分のお気に入りのカクテルを見つけるのもいいかもしれません。その日の気分や好みの味わいを告げて、オマカセでどんなカクテルが手元に置かれるかワクワクしながら待つ時間も楽しいものです。 渋谷「Adonis」のバーテンダー鈴木健司さんは、ホットカクテルをすすめてくださいました。
「料理と同じように、カクテルの世界でも季節を楽しむことができます。旬のフルーツを使っていろいろなアレンジを愉しめますし、夏には清涼感あふれる味わいがあるように、冬には身もこころも温まるようなカクテルがあります」
そうおっしゃって、まずつくってくださったのが「アイリッシュ・コーヒー」というカクテルでした。目の前でアルコールランプとセットになったウォーマーに砂糖(ザラメ)とウイスキーを入れたグラスを寝かせるように固定して火にかけ、ほどよいところで鈴木さんがフランベされると、わずかの間、グラス内から美しい青い炎が浮遊しました。 そしてウォーマーの器具からグラスを外し、濃いめのコーヒーを注ぎ、その上に生クリームを静かにフロート。最後に焙ったコーヒー豆を生クリームの上にあしらわれました。これは鈴木さんのアレンジのようです。ウイスキーとコーヒーのカクテルの上を冷たい生クリームが覆うと、どうしても香り立ちが弱まってしまいます。そこで焙ったコーヒー豆の登場という訳です。 この一連の「アイリッシュ・コーヒー」のつくり方を見つめているだけでもライブ感があり、素敵なパフォーマンスに魅了されます。

こころをほぐすホットカクテル

「アイリッシュ・コーヒー」は第2次世界大戦後のアイルランドのシャノン空港で誕生したそうです。いまのように航空機の航続距離が長くない時代。大西洋を横断するためのヨーロッパの給油地となっていたのがこの空港でした。冬、給油のために機外に降ろされて、寒い中を待合室へとやってくる乗客のために、冷えた身体を温めるカクテルとして誕生したそうです。 鈴木さんからそんなエピソードを伺いながらの味わいはまた格別です。コーヒーにアイリッシュウイスキーが柔らかく寄り添い、口中で生クリームとなめらかに溶け合うと、こころもゆるやかにほぐれていきます。 次につくっていただいたのは「ワイングロッグ」です。ワインと香辛料などを温めてつくるホットカクテルを、ドイツあたりではグリューワイン、フランスではヴァン・ショー、北欧などではグロッグといったように、いろいろな呼び方をするようです。
「ワインの好きな女性の方に限らず、甘酸っぱい温かみが恋しくなる寒い季節にふさわしいカクテルのひとつです。レーズンを食べながら味わってみてください」
そう鈴木さんにすすめられて、まずひと口含むと、赤ワインの風味がひろがる中にオレンジの酸味がほどよく潜んでいました。 鈴木さんの「ワイングロッグ」は、オレンジジュース、グラニュー糖、赤ワインでつくられ、ブランデーに漬けたとても美味しいラムレーズンが入っています。ちょっとお洒落で優雅な時間を過ごせる、素敵なホットカクテルでした。 こんなふうにバーテンダーと語らい、おすすめをいただきながら、自分好みの味わいを見つけ出していくのも、バーという非日常の空間に馴染んでいくよい方法だと思います。皆さんもどうか、自分と波長の合うバーを見つけ、自分好みの味わいのカクテルを探し出してみてください。

「Adonis」だけでなく、渋谷には素敵なスタンダードなバーがたくさんあります。BAR-NAVI検索からあなたが惹かれたバーへ、是非一度訪ねてみてください。

バーテンダー・鈴木健司
アイリッシュ・コーヒー
ワイングロッグ
BAR Adonis150-0043
東京都渋谷区道玄坂2-23-13
渋谷デリタワー9F
Tel.03-5784-5868
18:00~2:00(不定休)

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